花と、空と、リモンチェッロ/ Flower, Sky, and Limoncello

平和で美しく、ご機嫌な地球のために。For Peace, Beauty, and Joy on the Earth.

まるで新たな始まり - Just Like Starting Over

10月31日は金沢マラソンに参加した。

ゲストに野口みずき。エイドには金沢銘菓が並ぶ、参加者10,000人の大規模レースだ。コロナ対策の緊急事態宣言が解除されて、2年ぶりの開催に漕ぎ着けた。

僕個人としてもフルマラソンは2020年1月の勝田マラソン以来、ほぼ2年ぶりのレースとなる。その当時コロナはまだ中国武漢のローカルニュースといった印象だった。うっかり電車に乗り遅れ、開始直前にギリギリ到着してのスタートになってしまった。それがかえって良かったのか、無欲に黙々と走れて、初マラソンの記録を初めて破り自己ベスト更新となった。

今回は、ボストンマラソン参加基準(BQ)の3時間50分をクリアすべく、3時間45分に目標設定した。最初の12kmまでは上り基調なので、そこまでは慎重にキロ5分20秒から30秒のペースで行き、その先は35キロまで様子を見ながら最速キロ5分0秒まで上げていく。35km越えたら「なるようになれ」と全力で頑張る作戦だ。

そしていよいよスタート。最初こそスローだったが、慎重な出だしをと思いつつも、そこはレース、周囲のランナーに釣られてペースが上がる。「無理しない、無理しない」と言い聞かせながら、12km付近のコース最高地点(68m)を過ぎた。ここからは下り基調なので、気持ちよく、時々手元でオーバーペースにならないように確認しながら進む。

心配してたことの一つは、エイド。1分2分を争うフルマラソンでは、水などの提供物を奪い合うように取っていくランナーが多い。金沢の様に大規模レースならなおさらだ。そんな争いで足踏まれても良い様に、いつものワラーチやめてシューズで臨んだほど警戒していた。しかしマナーが向上したのか、エントリー数を減らしたからか、思いの外スムーズで、ぶつかることもなく、上手く抜けられた。

もう一つの心配は足攣り。これまで二回、17年の勝田、18年の京都で攣った経験から、ミネラル補填ゼリーを朝摂った。普段から夜20時から翌日正午までは食事を取らない所謂「8-16ダイエット」継続中なので、レース当時でも朝食は取らない。脂肪燃焼体質になった自分を信じてあえてレース前に胃の負担になることは避けたが、ミネラルだけは例外。それが功を奏したのか、攣らずに済んだ。

こうなればあとは持久力勝負。案の定30km過ぎてスピードが鈍った。それでも筋肉使って頑張ることなく、リズム良く走ることを心がけた。脚はミゾオチから生えているイメージで、背筋伸ばして、着地した瞬間に足を上げる。上げるというより、むしろジャンプする様に飛ぶ感覚を意識した。キロ5分10秒ペースには戻らなかったが、30-40秒で踏み止まり、なんとか3時間42分25秒(ネット)でBQをクリアした。後半タイムを上げる、いわゆるネガティヴ・スプリットの走りが出来れば、3時間30分切りも夢ではないが、それにはスピード練習が不足している(そもそもやってない)。

なんとか目標を達成して、満足できる大会となった。初マラソンの「さの」から5年、いきなりサブ4達成できて、すぐにもBQクリアかと期待したが、一進一退を繰り返した。力抜いて走った20年の勝田で、マラソンもメンタル要素大きいんだと気付き、今回は練習不足は否めない中で、目標を絞って、その為の具体策に集中して成果につながった。

もちろん直前の意識の持ち方だけでなく、ここ1年ほど続けていた走りの積み重ねが、ジワッと効いたのだと感じる。既に上記したように、一つは顎を若干上げ気味で背筋を伸ばす姿勢、二つ目はミゾオチから脚が生えている意識、三つ目がジャンプする様な足捌きだ。

そして最後に最も大切なことは「一人ではない」意識。マラソンは個人スポーツの代表みたいなものだが、走っている時は一人でも、決して一人で走れているわけではない。今回は大会のサービスとして36km地点で撮影した映像をインターネット配信する他、応援メッセージを電光掲示板に表示してくれた。タイミングが合えば映像を見て声援を送る「離れ業」が可能だ。大切な人に元気に走っている姿を見せたいというだけで、勇気100倍、元気が出る。残念ながら、実際にもらったメッセージをリアルタイムに確認できなかったが、他の人のメッセージで偶然「あなたは一人じゃない」という言葉が目に入って、目頭が熱くなった。

主催者・関係者・ボランティアはもとより、多くの人達の協力があっての大会。記録もさることながら、自分のやって来たことへの確信と、大切な人の思いを心に刻むレースになった。それはまるで、新たな始まり、のように晴れやかでみずみずしい感覚だった。