花と、空と、リモンチェッロ/ Flower, Sky, and Limoncello

平和で美しく、ご機嫌な地球のために。For Peace, Beauty, and Joy on the Earth.

相手国(人)の立場に身を置く重要性 - The importance of placing ourselves in the other country's shoes

コロナ禍中で対応の遅れが目立っていた我が国政府もようやく「出口戦略」を打ち出したところで、2週間前にロシアによるウクライナ侵略が始まり、世界が再び混とんの方向に振れだしてしまった。

IMF国際通貨基金)は今週水曜日(3/9)ウクライナに対する緊急融資140億ドルを発表し、翌日世界の報道機関を呼んで説明会(Round-table)を開き、当事国であるウクライナをはじめ、欧州、米州、アフリカ、中東、インド、中国、そして日本(日経新聞)の質問に答えていた。パンデミック・戦争といった一見すると専門外とも思える出来事に対応するIMFの姿勢と実行力には感心するし、陣頭指揮をするクリスタリナ・ゲオルギエヴァ議長のリーダーシップには頭が下がる。緊急事態に対応して自分たちのできることを考え抜き、タイムリーに発信する。IMFとしての具体的手段を提供して、政治リーダーの動きを促す。これこそが真のプロフェッショナルだと感じ入った次第だ。世界経済がパンデミックから立ち直ろうとしているときに、この戦争は当事国であるウクライナ・ロシアに打撃を与えるばかりか、既に高騰している石油や穀物といった国際商品を通じて世界に、特に最貧国に、手痛い打撃を与える。その危機感がIMF議長を動かしている。

ちょうど1週間前、米国ファンド会社Collaborative Fundのブログに"Surprise, Shock, and Uncertainty(驚き、ショック、そして不確実性)"と題した記事があり、コロナ禍とウクライナ戦争の共通点に言及していた。それはいずれも過去に何度となく起こっていたにも関わらず、人々が過去の遺物として顧みずに再度引き起こしてしまう人類の性(さが)という点だ。戦争に関していえば、世界が破滅一歩手前まで行ったキューバ危機を経験しているが、それが回避できた破滅であったがゆえに「狂気はさらなる狂気に」発展しうることを忘れているのかもしれないと警告している。

 

www.collaborativefund.com

キューバ危機の13日間を振り返ったロバート・ケネディの手記 "13 Days" によれば、彼の兄で当時の米国大統領だった J・F・ケネディは、常に相手国(人)の靴に自分の足を入れて決断していたという。すなわち対峙していたソビエト連邦のクルシュチョフ議長の立場で、米国がキューバ海上封鎖したらどうするか、空爆したら反撃せざるを得ないだろう、と想像を巡らせていた。したがって直ちに建設中のミサイル基地はもとより、軍事基地を空爆して侵略せよという強硬派を抑えて、「検問」から始めた。お互いの誤算・誤解が事態を悪化させる対応を呼ぶ。それが戦争の始まりだ。だれも望まない、誰も勝者にならない核戦争に。

ケネディ大統領は後にアメリカン大学での演説(1963年6月)でこう述べている。「なによりも核抑止力によって、自分たちの決定的な権益を守りながら、相手国に屈辱的な敗北か核戦争かの選択を迫るような対立を避けなければならない。」

彼はキューバ危機の交渉中、常に相手は合理的かつ賢明であり、十分な時間を取って自国の決意を示し続ければ、わかってくれると信じていた。そして自分達の側に間違い・誤算・あるいは誤解の可能性があることを認識し、その可能性をできる限り低減することに全力を尽くした。人類が滅亡に最も近づいたと言われる危機を叡智と決断で回避した後、ケネディはスタッフに「勝利会見」を開くなと厳命した。ともに危機を乗り切ったクルシュチョフ議長に敬意を表し、これが何かの勝利であるとすれば次世代の勝利であり、特定の政府や人々のものではないと述べた。

ウクライナ戦争の当事者であり、ロシアのリーダーであるプーチン大統領核兵器使用の可能性まで言及して、ウクライナを脅している。彼にも、ウクライナのリーダーにも、そして他の世界市民にも、戦争には勝利者は無いことを心にとめてもらいたい。一刻も早い停戦となることを願っている。