花と、空と、リモンチェッロ/ Flower, Sky, and Limoncello

平和で美しく、ご機嫌な地球のために。For Peace, Beauty, and Joy on the Earth.

ハレルヤ - Hallelujah

11月も後半になるとクリスマス飾りが目に付き始める。近所の2軒の家が、毎年競い合うようにイルミネーションを飾って、夜はチカチカと賑やかだ。僕が入居しているマンションも入口にクリスマス・ツリー、中庭をイルミネーションで、こちらは地味ながらも季節感を出している。

 

So this is Christmas, what have you done?

さてクリスマスになった。今年は何をしたのかな?

(Happy Xmas, John&Yoko)

 

なんてクリスマス・ソングにハッとさせられて、ちょっと焦るのもこの季節。多様性を前提とする現代社会において、キリスト教のお祭りだけを殊更に言うのは「正しく」ないので、公的には「メリー・クリスマス」と言わずに「季節の挨拶 (Season's Greetings)」ということになってはいるが、クリスマス・ソングには元気や癒し、感謝心を感じるものが多い。

きよしこの夜」「サンタが街にやって来る」など伝統的なクリスマス・ソングに比べると比較的新しいが、ハレルヤ(Hallelujah)がお気に入りのひとつだ。ハレルヤ・コーラスは神を祝福する、どちらかというと派手な歌だが、レナード・コーエン(Leonard Cohen)作詞作曲のハレルヤは、静かに語るような曲だ。ギターの弾き語りで、いやせめてカラオケでも歌いたいと思うのだが、英語の歌詞の読みも意味も難しくてまだできない。

1984年に発表されたこの曲は、コーエンによれば「宗教曲ではない」のだが、カナダの名門マッギル大学で神学を修めたユダヤ系の彼が5年もかけて書いた詩には、旧約聖書の物語を背景とした言葉も多く、直訳では解りにくいし、意訳も難しい。聞けば全部で80節もあるそうで、「まず歌詞の第1節では、ダビデが初代イスラエル王サウルに竪琴を弾いたという旧約聖書『サムエル記』の逸話が語られ、ついでダビデが月明かりのもと沐浴するバトシェバを誘惑する逸話、さらに『士師記』のサムソンの髪をデリラが切り落とす逸話が語られる、といった具合で、ヴァースごとに『ハレルヤ』の文言が繰り返される」歌詞である。

歌詞の真意はさておき、コーエンが歌ったオリジナル版は残念ながらそれほど売れなかった。しかしボブ・ディランをはじめとして多くの歌手がカバーし、またシュレックなど映画にも使われて徐々に広まり、今では定番の一つとなり、クリスマスシーズンには毎年聴かれるようになった。

思い出すのは2013年4月20日ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パーク球場。埋め尽くす35千人のファンは、大型モニターに映し出される写真を見ながら、ジェフ・バックリー (Jeff Buckley) が歌うハレルヤを聴き、涙した。 写真はその5日前(4/15)の第117回ボストン・マラソンのシーンだった。忘れもしない爆破テロ事件のものだ。3名の命が奪われ282名が負傷した。(後日の犯人逮捕時含めた死傷者は304人にのぼる。)

youtu.be

もともとは「神に栄光を」という意味のヘブライ語である「ハレルヤ」。輝かしい喜びや祝いの言葉であるとともに、苦しい時の励ましや癒し、深い感謝の言葉でもある。曲の最後に出てくる「冷たく壊れたハレルヤ(a cold and broken Hallelujah)」は辛い時でも呟けば救われる言葉のようにも感じられる。だからいろいろな場面で多くの人が歌う歌なのかもしれない。

 

レナード・コーエンは2016年11月7日に82歳で亡くなった。僕が初マラソン出場に向けて仕上げの4週間に入った頃だ。そして今、ボストン・マラソンへの準備をしながら、8年前にボストン市民を励ましたハレルヤを特別な感慨を持って聴いている。沢山のカバーがある中で、オペラ歌手ボッチェリが彼の娘と一緒に歌うハレルヤで、今年のクリスマスを迎えたい気分だ。