花と、空と、リモンチェッロ/ Flower, Sky, and Limoncello

平和で美しく、ご機嫌な地球のために。For Peace, Beauty, and Joy on the Earth.

ワラーチから裸足へ【変態三部作 第三話】A Trilogy of My Transformation - Episode

【単なる変化を超えた、劇的な変化を変態という。それはあたかも青虫が蝶になるような、変革(トランスフォーメーション、Transformation)。これは2016年9月に始まった僕の変態履歴である。】

 

川の道フルを走り終えた2週間後、僕は変わったレースに参加しようとしていた。飯能ベアフットマラソン。ベアフット、つまり裸足のマラソン大会だ。

 

もともとマンサンは裸足で走るための補完的な役割をするサンダルという位置付けで、発案者のマンさんは、「履く」ものではなく、「纏う」ものだと言い切る。マンサンは5mm厚のゴムソールにパラコードの鼻緒が緩く付いていて、足を上げるとソールは足裏から離れ、地面に着地するとパラコードが足の表から浮いて離れる。パラコードは緩くふわっと結ばれているが、それでいて足を抜いても凛として立っている。そんな「ゆる・ふわ・りん」のマンサンを纏うと、裸足で走りながら、地面に着地する瞬間だけソールが足裏に入るような感覚になる。ソールは、足裏を尖った小石などから守る厚さと、地面にある異物を感知できる薄さを兼ね備えている。

 

そんなマンサンで250km以上走れたら、裸足の10kmくらい走れるだろう、と思って気軽に申し込んでいたが、これがとんでもない誤りだった。芝生や土だけの道は気持ち良いが、いわゆるガレ場では刺すような痛みでまともに立っていられない。身体が縮こまり、冷や汗が出て、変なところに力が入る。とても走れない。

 

以前にも書いたが、頭の上に重い物を乗せている感覚で背筋を伸ばし、体重を足裏全体で支えるようにできると、感じる痛みが分散されて耐え易くなる。そのような身体使いは、練習して慣らすしかない。

 

ベアフットマラソンの2019年には、10kmにエントリーしてDNFだったが、2020年は5km、2021年は10km、をそれぞれ完走した。しかしまだガレ場では痛さが先に立って、動きが止まる。もっともっと裸足の経験を積んでいかなければならない。

そのために裸足で山を登る「山裸足」のグループに入って、2ヵ月に一度くらいの頻度で山裸足するようにもなった。

 

青虫が蛹になり蝶になることが変態の完成とすれば、マンサンで走ることはまだ蛹、裸足で走れてようやく蝶になれる。そう感じている。

マンサンで走り始めた頃は、下り坂やダート道で遅くなる度に「シューズ履いてたら違うハズ」とシューズへの未練を感じていた。今は苦手をそこそここなして快適に走れるので、比べればシューズの方が速いかも知れないが、シューズを履きたいとは思わない。

同じことが裸足にも言えるのではないかと思っている。裸足で地面から得られる情報はマンサンを通して感じるそれの数十倍、数百倍であろう。それを味わって楽に走れる境地に達したいと思う。

足が地面から捉える情報に敏感に反応して上手に走れるようになって、蝶として大空に羽ばたくことを夢見ている。

 

(終わり)