花と、空と、リモンチェッロ/ Flower, Sky, and Limoncello

平和で美しく、ご機嫌な地球のために。For Peace, Beauty, and Joy on the Earth.

裸足で走る

東海地方が梅雨入りした先々週の日曜日(2021年5月16日)は、関東地方もはっきりしない天候であったが、時々雨が降る中、第10回飯能ベアフットマラソン大会が埼玉県飯能市で開催された。

昨年に続きコロナ禍で、今年も開催が危ぶまれたが、主催者の熱意と工夫と執念で、2012年の第一回大会以来10年連続しての開催に漕ぎ着けた。まだ裸足ランニングが日本で広まり始めて間もなかった当時は、「飯能クロスカントリー・ベアフットマラソン&駅伝」と称してシューズ参加のランナーの方が多かった。(裸足は207名中71名)10km、21km、駅伝の3種目で行われたが、21kmと駅伝はあまりにも裸足には過酷ということで2回目からは廃止となった。しかし裸足ランニングの普及とともに参加者が増えた2016年の第5回には21kmが復活。翌年の第6回大会からはシューズ部門が廃止され、全員が裸足で走る名実ともに「ベアフットマラソン」の大会となった。

第7回大会に弟が参加(21km完走)したことで裸足だけの大会があると知り、僕も興味が湧いて2019年の第8回大会に初参加した。ワラーチというサンダルで走り始めて1年。その2週間前に「川の道フットレース514km」の半分をマンサン(ワラーチの一種)で走ったことで自信をつけていたが、実際に裸足で走った経験は皇居を2周(10km)しただけだった。

大会でレースコースに使っている自然遊歩道はその年、近くにムーミンバレーパークというテーマパークができたことで整備され、砕石やウッドチップが撒かれて、裸足にはより厳しいコースになっていた。

そんなことも知らずに何とかなるだろうと試走も練習も無しに参戦し、痛い目にあった。芝生や土だけの道は気持ちよく走れるものの、小石、木の枝、木の実の混じった普通の山道は痛くてびっくり。ましてや砕石やウッドチップの撒かれた道は、痛いなんてものではなく、文字通り針の筵であった。痛さのためまともなフォームで走ることができず、余計な力を使い、余計な筋肉に負担をかけて、1時間かけて周回コースを1周(5km)して帰ってくるのがやっとであった。エントリーしていた10kmレースの制限時間は2時間。とてもまた山に戻って「針の筵」の上を走って帰ってくる気力は無くなっていた。マンサンでのランニングにはとてもよく馴染んだし、マンサンは裸足と表裏一体と言われていた。皇居での裸足ランはさほど苦労はなかった。しかし実際の自然道における裸足ランはアスファルトの皇居とは大違い。自分には裸足ランはマンサン・ランと全く別物だと感じた。

転機になったのはその一月後、マンサンの生みの親、マンさん(坂田満さん)主催のワークショップで裸足ランニングのコツを教わった時だ。代々木公園で行われたそのワークショップは、マンサンを作ってからそれを使って歩いたり走ったりするものだが、目から鱗だった発見は水を入れた20Lのポリタンク(つまり20kg)を頭上に乗せて裸足で歩いた時だった。自分の体重だけでも十分痛いのに、20kgもの錘を乗せたらさらに痛いはずだ。しかし実際には逆だった。錘を頭に乗せることで姿勢が真っ直ぐになり、重心が安定すると、足が感じる痛みは格段に軽減した。痛くないわけではないが、少し痛みを伴う刺激に感じるだけ。そっと歩き始めても大丈夫。最後には軽く走ってもみたが、平気だった。頭は体の中でも重たい部位であるが、それが正しく真っ直ぐに支えられていると足裏均等に重力が分散されて、単位面積あたりの痛みが緩和するという理屈だ。アフリカで大きな荷物を頭に乗せて裸足で運ぶ人たちの映像をよく見るが、まさにそのようなことを自ら経験したことで、裸足ランニングを見る目が変わった。また裸足のみならず、マンサン・ランニングのより良い走り方へのヒントとなった。

話をベアフットマラソンに戻すと、今回僕は再度10kmに挑戦して、「針の筵」には苦戦したものの何とか完走してリベンジを果たした。本番前、裸足ラン講習会に参加し、元ベアフットマラソン21kmチャンピオンであり、フルマラソンの裸足日本記録も持っていた高岡さんにポイントを3つ教わった。

(1) 頭の頂点を上から引っ張られているような感覚で、背筋を真っ直ぐ、下を向かないようにする。つま先過重を防ぎ、足裏全体に重さが分散する。(砕石などを踏んだ時の痛みを和らげる)

(2) 内股にならず、足を前に出すときは外旋させる。そのことにより腰(股関節)をより使い易くする。

(3) 腹式呼吸。鼻から息を吸い、胸を膨らますのではなく、腹を膨らます。口を窄めて長く息を吐く。できれば鼻から吐く。体幹がしっかりして上下動が小さくなる。

これらのポイントは、普通のランニングでも有効で、より体に負担の少ない走法だ。(2)の外旋は中臀筋及びその周辺のインナーマッスルを使うために、慣れとともに関連筋肉の鍛錬が必要だが、裸足ランは低負担走法(楽走)のギブスでもあり、裸足ランに慣れてフォームが安定してくれば、それがそのまま楽走フォームとなるものと期待している。より長い距離をより楽により速く、そしてより長年に渡り走ることができるようになりたいものだと願っている。