花と、空と、リモンチェッロ/ Flower, Sky, and Limoncello

平和で美しく、ご機嫌な地球のために。For Peace, Beauty, and Joy on the Earth.

第16回日本横断 川の道フットレース 2021 (503km)の振り返り(レース・マネジメント)

先週の川の道フットレースの振り返り(序章)に続き、今週はもう少し詳しく記録と記憶を辿っていきたい。事前の皮算用としてはPlan A, B, Cと3つ用意した。Aはベスト・ケース。Cはワースト(関門ギリギリ)。Bはその中間で、日本海の夕陽を見るプランだ。Plan Aに沿って行けば5/5 15:25にゴールできる計画だ。

 

⒈ スタート 埼玉県川越市本川越駅 〜 第一レスト・ポイント(RP)埼玉県小鹿野町 両神荘 142.9km

スタートは密を避けるために、2人ずつのウェーブ・スタート。9:20予定だったが、行ってみると準備出来た順にスタートしたため 9:12 になった。途中でスタッフに確認しない限り正確なスタート時間はわからない。ゴールがギリギリになった時には、この時間差が効いてくるので、本当は確認すべきだったと後から思う。天気は晴れ。ずっと雨の予報で心配していたが、晴れてしまえば今度は暑さが心配だ。

バテないようにゆっくり入ったつもりが、最初のチェックポイント(CP)戸田彩湖までの30.5kmはキロ7分ペースだった。途中上位常連のMさんからキロ10分で走り続けて、レスト・ポイントで3時間休めば、100時間切ってゴールできると言われた。RPでは最低2時間留まるルールだが、風呂や食事で1時間、2時間寝て合計3時間ということだ。それはいきなりは無理でも、仮にレスト8時間として115時間を切ることならできるはずだと考えた。走っている途中の眠気対策がしっかり取れての話だが。

埼玉県も蔓延防止(いわゆるマンボウ)でレストランが20時で閉まる。ここまで大会側が準備したオニギリやサンドイッチなどのエイド食ばかりだったので、まともに食事が取れるのであればきちんと食べたい。荒川河川敷を抜けて街道に出る鴻巣大芦橋(CP4、67.9km)にできれば18時前後に着きたいと思いキロ8−9分維持していく。18:04到着。

ここで夜間走行用にヘッドライトを装着していると仙台から参加のHさんが追いついてきた。二人でレストランを探しながら走る。陽が落ちると涼しくなったのは良いが風が出てきた。時折雨もぱらつき早く屋内に入りたい。実は食欲もあまりないので、軽くコンビニのイート・インとも考えたが、あいにくマンボウ対応でイート・インはことごとくクローズ。結局Hさんのアイデアで熊谷の丸亀製麺所に入る。うどんは消化も良く正解だった。CP6波久礼駅(102km)までは二人で付かず離れずで進み、その先の長瀞で別れた。0時を越えると流石に眠く、走りも遅くなる。それでもキロ12分と計画通りのペースで両神荘までなんとか進めた。5/1 7:29着。最後は眠いし気持ち悪いしでフラフラした感じだったが、後から思えば塩分不足だったか?9時に風呂が閉まるのでその前に到着できてまずはめでたし。温泉の風呂で汗を流し、食事も取らずに横になる。2時間後、気分が戻ったので食事をとって、出発目標を15時として14時までまた寝る。食事前に大正漢方胃腸薬、スタート前に芍薬甘草湯(攣り防止)を飲む。気休めかも知れないが、漢方薬の少し苦い味・香りがなんとなく有り難かった。

 

⒉ 第二RP(CP13)長野県小諸グランドホテルまで。(第一RPから108.8km)

RP1の滞在時間7.5時間は予定通り。到着が2時間早い分の余裕をキープして15時スタート。二種類のサンダルを用意して臨む。一つは「マンサン。」太さ4mmのナイロン製丸紐(パラシュート・コード)と厚さ5mmのゴム底で自作したサンダルで、これを基本的に履いている。第一RPまではこれ一本で走った。裸足で履くサンダルなので、蒸れ擦れと無縁に快適に走れるが、足との締め付けが緩いので泥や小石の多いトレイルには不向き。裸足なので寒さに弱い。もう一つの「アサーチ」もサンダルだが、5mm厚のゴム底に1mm厚の滑り止シートを貼っていて、平たい紐で締め付けるので足にしっかり固定してトレイルを走りやすい。裸足でも履くがソックスにも馴染む。薄いゴムサンダルは軽くて携帯も楽なので、シューズと違い予備を持っても負担にならない。「マンサン」も「アサーチ」も開発者名に因んだ品名で、前者は坂田満さん、後者は板井麻恵さんのオリジナルだ。

CP9志賀坂トンネルに向かう途中で、思わぬ私設エイドに呼び込まれる。今回はコロナ対策で常連私設エイドの皆さんには本部から自粛要請がなされたが、ここは「孫にやりたい」と言われて初めてやってみたという。自宅前で焼き鳥とおにぎりを振舞ってくれた。椅子も出してくれて、ありがたい休息になった。あたりはすっかり暗くなって、上り坂を進んでいくと雨が強くなり、突然稲光。まだ雷鳴との時間差があるので、なんとか早くトンネルまで進んで、場合によってはそこで避雷しようと急ぐ。19:17到着。雨も小降りになって、雷も遠くになったようなので、休まず進む。前回(2019年)もここで眠くなったが、その時ほどではないけれども眠気を感じたので、上野村道の駅トイレで少し寝る。ここは綺麗で暖房も効いているので、濡れたジャケットを乾かすこともできた。ここから再出発するもまた眠くなり、今度は川の駅で休む、。駅全体は灯りも消えていたが、奥のトイレ(多目的)が使えて、そこで15分横になった。鼻水とくしゃみが時折出て、風邪の前兆かと思ったが、「気合いで治る」と言い聞かせて進む。途中何人かのランナーと抜きつ抜かれつになった。試走したCP10下仁田交差点(CP9から37.4km)はキロ13分で切り抜けた。5/2 3:24着は予定より4時間早い。下仁田のコンビニで少し休むも、寒い朝方に外で味噌汁を啜っただけ。ここから眠気に襲われて、歩く。街道のこんにゃく屋などが開く時間まではまだまだ時間があるため、朝日が出て暖かくなるのを待って、道端で15分。その後、内山トンネル手前のガードレール外で15分仮眠する。なかなか走れず、トンネルを越えて佐久に入李、中華料理「秀山」でランチ。ここでやっと落ち着いた。その後CP11佐久中込交差点までは少し走れたが、このCP間(35km)はキロ17分と大ブレーキだった。眠くても腕を振り脚を動かして進む。あるいは思い切って15分寝るなど、メリハリをつければ良かった。立って止まって目を瞑るなど進むでもなく休むでもない中途半端な行動が多すぎた。ランチ後の延長で小諸までは13.5km、スムーズに進めた。熊谷でうどんを一緒に食べたHさんが、「しっかり食べると(痛みが)癒える」と言ってたが、その意味がわかる気がした。第二RP小諸グランドホテルには15:53到着。まだ予定より1時間半先を行っていた。

ホテルにはあらかじめ個室を取って、リフレッシュする予定だった。食事もコンビニを避けてホテルの食堂で取ったが、コロナ禍で縮小運営されてたバイキングはイマイチだった。スタート当日の無料朝食バイキングと大差ない。それでも7時間睡眠確保して翌朝3時にスタートすると決める。

 

⒊ 第三RP旧三箇小まで(第二RPから132.4km)

出発時「顔が浮腫んでる」とランナーからCP1でスタッフに転じたRさんに言われた。風邪の影響もあるかと思ったが、しっかり寝て気分スッキリ、第三RP(CP19)の新潟県津南市旧三箇小目指した。気温1℃。アサーチ+ソックスで防寒して進む。途中試走を共にしたSさんを抜き、CP 14上田城跡に6:13到着。ここでアサーチをマンサンに履き替えていたら、同じく一緒に試走したIさんに追いつかれて、一緒に走る。Iさんは前回ゴール手前20kmくらいで一緒になって、眠気に襲われて半パニック状態だったところを助けてもらった。制限時間30分前にゴールしたギリギリ仲間だ。良く試走してFacebookにアップしてくれるKさんも一緒だ。すき家で朝食を食べて別れる。長野市に入り CP 16善光寺に14時到着。門前蕎麦「大丸」で蕎麦食べて、飯山に向かう。前回もこの辺りで疲れが出たが、同様に少し足が遅くなって、Dさんに抜かれる。ハーフのTさん(おそらくこの時点で女王Nさんに次いで2位)にも抜かれ、CP 17浅野交差点に着く頃には予定より45分遅れとなる。ここで夜間走行に備えてアサーチに戻す。明るいうちに飯山に向かう旧街道を走りたかったが、今年も暗くなってしまった。飯山駅で少し横になり、意を決して進むも眠くてグダグダ。意識はぼんやりし、手袋も落として危機に陥る。一瞬DNFも頭をかすめるほどだったが、野沢温泉手前でMさん、Fさん、Sさんの3人組に合流して、津南まで引っ張ってもらった。前回のIさん同様、眠気に極度に襲われた時は、人に同行して喋ることで助かることも多い。津南の最初のコンビニで別れて、最終RP CP 19旧三箇小に8:55到着。予定より1時間半遅れだが、ゴール関門時間には十分余裕がある。前回より1時間早くここを出発すれば、少なくとも時間内完走はできる。ここで目標をPlan Aから一気にPlan C(ギリギリ完走)に落として、16時出発に決めて寝る。滞在7時間。

 

4. ゴール、新潟市 海の家 静浜亭まで(第三RPから118.9km)

出発はベテラン、Aさんと3人のハーフ女子ランナーそしてFさんと6人ほぼ一緒にスタート。途中、68歳で初挑戦のTさんが、寝不足で幻影が見え出したため道端で横になっているのを見ながら、十日町市を目指す。(Tさんは復活して見事に完走を果たす。)「へぎそば」を食べると言う言葉に惹かれてAさん達と同道する。Aさんが進み具合を考えて、歩いたり走ったりしながらグループを引っ張るのは参考になった。Fさんはこのグループのスピードについて行けないと、走りを多くしながらほぼ同じペースで進む。この段階に来ると自分のペースを守りながらゴールまでコントロールしていけるかどうかが鍵だ。

さて、へぎそば求めて十日町中心街に着くも、蕎麦屋は早く店じまいしていて開いている他のレストランすら見つけられない。結局通りから少し奥に入った洋食店ナポリタンを食べる。夕食のサーブが遅く1時間近くかかったため、遅れを取り戻すべく急ぐも、メンバーに眠気が出てしまいややスローな展開。CP 22の長岡には翌朝(5/5)の6:41とギリギリゴールラインからも15分遅れた。しかし「ギリギリ」はかなりゆっくりペースなので、まだまだ間に合う。眠気を仮眠で誤魔化しながら先に進む。CP23三条大橋13:13着。関門ほぼ8時間前(あと40kmなので時速5kmで進めばいい!)。ガストで昼食兼仮眠。ここからはスパートだ。長い単調なバイパスを進んでいくと、雨が降ってきた。暗くなり、眠気はないが走りも遅くなる。CP24大野大橋(ゴールまであと10km)に19:25。関門まで1時間35分+α(ウェーブ・スタートのクレジット、10分か?)なんとかなる。でも計算違いしてゆっくりでも20時半にはゴールできると気を抜いたのが良くなかった。本当ならそれまでの調子で走り続けなくてはならないところを少し歩きも交えて「川の道岬」を目指した。ガス欠も感じたが、手持ちの羊羹を探す手間・時間は惜しんだ。道をGoogleマップで再確認したことでも余計な時間を取り、岬到着は20:58。最後は「爆走」したものの、132時間10分13秒にゴールした。制限時間10分オーバー。公式記録は完走扱いだが、もしこれが初完走だった場合にはタイムオーバーで「準完走。」永久ゼッケンはお預けだ。最後の詰めが甘かったと反省するしかない。

 

全体を振り返ると、一時食欲がなかったりしたこともあったが、概ね体調が良く、脚に目立った痛みや疲れも無く完走できた。パフォーマンス的には前回より40分遅かったが、前半は比較的速いグループと同等に走り、後半は眠気でグダグダした部分を除けば自分の走りをコントロールできた。

 

最後に走る・食べる・休むのスキルについて今回の気付きをまとめておく。

【走る】走りは今回大きな向上を感じた。前回は足首が捻挫みたいに腫れ、ロキソニンテープを使うくらいだったが、今回は痛みも疲れもあまり感じなかった。楽に走るポイントは3つ。

1)頭を天から引っ張られる感覚で姿勢良く。うつむくと体重が爪先過重になり過ぎる。

2)脚を外旋して小指から着地。拇指球、踵と続いて、踵着いたら素早く離地。

3)腹式呼吸。下腹膨らませて鼻から吸い、ゆっくり長く吐く。口をすぼめるのも一法。

 

RPに預けたバッグにゴルフボールを忍ばせて、風呂上がりに足裏でコロコロしたのも、疲れを取るのに効いた。

 

【食べる】については「学び」があった。

1)「胃が必ずしも強くない」ことを自覚して、胃薬を持つ

2) 経口補水パウダーなどで塩分コントロールをする

3) 羊羹などで糖分補給するも、基本は脂肪を燃やす

4)出来れば三食、(食堂などで)きちんと座って食べる

 

【休む】10kmあるいは2時間毎にコンビニ休憩。RPでは7-8時間滞在の6時間睡眠を基本とした。いつも眠気対策で使ってるBLACK BLACKやレッドブル、コーラなどを、胃に負担をかけないために極力取らなかったことは良かったと思う。しかし強度の眠気に襲われた時、これらに頼らずどう頑張るかに課題を感じた。

1) 最初の40時間寝ない人や、3時間しかRPに滞在しない人を参考に、前半の組立を再検討する。

2) RP3時間睡眠にして、途中の仮眠を15分取る。

3) 人と会話する。

4) 歌、しりとり、腕振り、など合わせ技を使う

5) コーヒー、コーラ、カフェイン入りジェル(アリナミンなど)、をほどほどに使う